目次
賃貸物件の初期費用を5~10万円抑える方法と交渉術
お部屋を借りる際、家賃やそのほかの費用を含めて「こんなにかかるのか…」と思った経験はありませんか?もしかしたら、その費用はもっと抑えられるかもしれませんよ。
今回は、賃貸物件を借りる際に知っておくべきルール、不動産業界の仕組み・交渉の余地がある項目などを紹介します。
1複数の不動産会社が同じ物件を扱っている
不動産業界の仕組みでまず理解しておきたいのは、「複数の不動産会社が同じ物件を扱っている」点です。
身近な例でいうとヤマダ電機に行こうがビックカメラに行こうが、ソニーやパナソニックなど同ブランドの家電製品が買えますよね。
不動産業界も同様に、1つの物件をいくつかの不動産会社が取り扱っています。
そもそも、多くの不動産会社は「レインズ」という不動産会社専用の物件データベースから物件を仕入れています。まれに1社しか取り扱いのない「専任物件」も存在しますが、割合は全体の2~3%ほどとごくわずかです。
つまり、目当ての物件を借りるのに1つの不動産会社にこだわる必要はありません。見積や担当者の対応を比較し、そのなかで対応がよく初期費用が安い不動産会社で契約しましょう。
2知らないと不利な契約を提示される場合も
中には、入居者から必要以上にお金をとる不動産会社も存在するため注意が必要です。
1度、賃貸契約の際に関わる人物を整理しましょう。物件を借りる際に関わるのは、物件を借りる「入居者」、物件を貸す「オーナー(大家さん)」、物件を仲介する不動産会社(「仲介業者」)、物件を管理する不動産会社(「管理会社」)の主に4者となります。
そして、本来入居者とオーナーの間でどんな契約をするのかは自由。しかし、間に立つ仲介業者や管理会社が、自分たちの儲けになるように身勝手な契約内容を提示する場合があります。
損する契約を結ばないためにも、信頼できる不動産会社を見つけましょう。また、万が一何かあった際のために、不動産会社とのやり取りはすべてメールで残しておくのもコツです。
3良い不動産会社を見つけるコツは?
それでは、信頼できる不動産会社はどのように見つければいいのでしょうか。
まず、契約前に必ず相見積もりを取りましょう。提示された費用が妥当かを判断するためにも、相場を知る必要があります。
相見積もりを取る際は、ポータルサイトの問い合わせで「初期費用を確認したいので見積もりをお願いできないか」と記載すればOK。
他の不動産会社で内覧済みでも、特にその点に触れる必要はありません。最低でも3社以上には見積もりを提示してもらいましょう。もし見積もりを出すのを拒否された場合、その不動産会社は避けるのが無難です。
以下は僕が実際に不動産会社からもらったメールです。お願いした見積もりの件には触れず、まずは店頭にくるよう誘導してくる典型的なダメ不動産の例です。
いきなり来店を勧めてくる不動産屋はこちらの意見を無視し強引に勧誘してくる可能性があるので避けた方が無難です。
またお客さんからの問い合わせを増やすため、すでに契約済みの優良物件や、実際は取り扱っていない条件の良い物件をあえて掲載する不動産会社にも要注意。
魅力的な物件でお客さんの興味を引き、問い合わせすると初期費用も送ってくれます。
しかし実際にお客さんが来店したら「あの物件は決まってしまったので、別の部屋を紹介します」と違う物件を紹介してきます。いわゆる『おとり物件』です。
『おとり物件』は宅建業法32条で禁止されている違法行為です。しかしお客さん側から見抜くことがまず不可能なため、摘発が難しく未だになくならないのが現状です。
【豆知識】おとり物件を確実に見分ける方法
おとり物件か確実に見抜くには「iettyのアプリ」が便利です。気になる物件のURLを送ると不動産屋だけが見れるデータベース(レインズ)で空き状況をチェックしてくれます。
スーモやHOME’Sにはない未公開物件も探せる便利な賃貸アプリです。
4「大手だから安心」は大きな間違い
不動産会社を選ぶ際に誤解しやすいのは、「大手の不動産会社なら安心」という点。テレビCMでよく名前を聞く「エイブル」「センチュリー21」「ピタットハウス」などは、多くの人が信用してしまいがちです。
しかし、有名な不動産会社が良い不動産会社とは限りません。これらの不動産会社はフランチャイズ契約を結んでおり、入居者に信頼してもらえるよう大手の看板を借りて営業しています。運営については各店舗に任されており、店舗によって対応に違いがあります。
上記はエイブルが事業提携を募集しているページ。エイブルは建築・建設業などの異業種が行っている場合が多い。出典元:エイブル
上記はエイブルが事業提携を募集しているページです。サイトにも書いてある通り未経験の業種がエイブルと提携して行っている場合が多々あります。
大手不動産会社だからといっても安心せず、ほかの不動産会社と同様に比較して利用を検討しましょう。なお、事前にブログをチェックする際は、フランチャイズのページではなく各店舗のページをチェックするのがコツです。
5お得に借りられる「キャッシュバック」の仕組み
中には、契約をすると入居者にいくらかキャッシュバックしてくれる不動産会社も存在します。
キャッシュバックの元手は、オーナーが不動産会社に支払っている広告料。人気のない物件で紹介に力を入れてほしい際に、オーナーが不動産会社に通常よりも多く広告料を支払う場合があります。契約のお礼に、広告料の一部を入居者にわたすのがキャッシュバックの仕組みです。
優良物件とはいえない部屋が多いものの、お得に賃貸物件を借りられるチャンスでもあります。ぜひ、複数の不動産会社を比較して見つけてみてください。
不動産屋がぼったくりしてくる項目一覧
部屋を借りる際に、不動産会社からいくつか請求される項目があります。しかし、中には不動産会社が売上を上げるために、原価の何倍も高い価格で請求してくるものも。具体的には、以下の項目に注意してください。
1書類作成費用
契約に関する書類作成費用を請求される場合がありますが、仲介業者が請求していいのは宅地建物取引業法のルール上「仲介手数料のみ」です。本来は書類作成費用も仲介手数料に含まれており、書類作成費用という名目で請求することはできません。
しかし借りる側が把握していないのを逆手にとって、こっそり上乗せしてくる不動産屋も少なくありません。もし書類作成費用を請求されても払う必要はありませんので毅然とした態度で断りましょう。
2消火器
初期費用の中に1万~1万5千円で消火器代を入れてくる不動産屋もいます。しかし消火器はオーナーが設置する義務があり入居者が設置する義務はありません。もし消火器代が入れられた場合は、「オーナー側の義務ですよね?」と断りましょう。
ただし建物全体として設置義務があるだけで必ずしも「室内」に設置する義務はありません。消火器の配置は「各階ごとに設置する、またどの場所から歩いても消火器に20m以内にたどりつくこと」というルールになっており、ほとんどの場合は共有の廊下にのみ置いてあります。
もし部屋にも一つ置いておきたい場合はホームセンターで買ってくとよいでしょう。2,000~3,000円前後で買うことができますよ。
3害虫駆除費用・抗菌・室内消毒費用
「部屋にゴキブリがでないように」「部屋を綺麗にするために」などの口実で害虫駆除費用や室内消毒費用を請求される場合があります。
部屋数や広さによっても金額が変わりますが、相場は1万~2万円程度。それなりに高い費用を払うので業者が消臭抗菌をしてくれると思いがちですが、ほとんどの場合、消臭抗菌スプレーを担当者が撒くだけです。
それも撒くだけならマシな方。実際はお金だけもらい、なんの対応をしていないことも多々あります。有名なのがアパマンが起こしたガス爆発事故です。
アパマンショップの担当者が未使用の除菌消臭スプレー120本を廃棄するため、室内に噴射。その後湯沸かし器を点けた際に、店舗内に充満したガスに引火し、爆発が起きました。
この事故により、消臭抗菌と称して1~2万円をとっていたにも関わらず、実際はスプレー缶すら部屋に撒かず何もしてないことが明るみになりました。
不動産屋が提示してくる部屋の除菌や害虫駆除は、まずやる必要はありません。無駄です。もし綺麗にしてから住みたい場合はホームセンターで売っている除菌消臭スプレーを買ってきて自分で撒きましょう。
4安心入居サポート
安心サポートの相場は1万5千~2万円程度。内容は業者によって多少違ってくるものの、おおまかには以下のようなサービスです。
- 鍵をなくした場合の対応
- 電気やガスのトラブル対応
- ガラスが割れた場合の対応
- 水漏れや詰まりなどのトラブル
生活でのトラブルを24時間365日サポートしてくれるというサービスです。しかし実は、安心入居サポートのサービスは、火災保険でほとんど賄えます。
火災保険は火事だけに対応している訳ではありません。たとえば以下のような場合も火災保険でカバーできます。
- 空き巣に入られ窓ガラスを割られた
- 子供がボールを投げテレビの液晶が割れた
- 水道管が凍結して破裂した
- 洗濯機のホースが外れて床が水浸しになった
- 洗面台に重いものを落とし誤って破損した
- 地震で家具が倒れて壁を破損した
また、建物や設備自体の老朽化によって水漏れが起きたり、設備が脆く台風などで窓ガラスが割れたなど建物が原因で起きた被害は大家さんが補償することが義務となっています。
結果として安心サポートに入らなくても火災保険、または大家さんの補償でほぼすべてカバーできます。
入居者が安心サポートに加入すると、その売り上げの一部が不動産会社に支払われるため、少しでも利益を出そうと加入を勧めてくる不動産屋は多いです。しかし基本的には火災保険と大家さんの補償があるので加入する必要はありません。勧めてきてもはっきり断りましょう。
5仲介手数料
宅地建物取引業法のルール上、不動産屋に支払う仲介手数料は家賃の1ヶ月分までと決められています。たとえば家賃7万円の物件を借りる場合、仲介手数料の上限は税込みで7万7千円となります。
7万円×1ヶ月分×消費税率10%=7万7,000円
しかし不動産屋の中には共益費を含めた仲介手数料を提示してくる場合も。仲介手数料はあくまで「家賃」の1ヶ月分であり、共益費を含めた金額の1ヶ月分ではありません。
共益費を含めた仲介手数料を提示してきた場合は拒否することができます。
6火災保険
「火災保険」は入居者の過失で家を燃やしてしまった、あるいは水没させてしまった場合に有効な保険。契約時の加入が一般的ですが、不動産会社が高額の火災保険を案内してくる場合もあります。
通常、火災保険を選択する権利は入居者側にあります。一般的には、年間で4,000円程度の火災保険であれば十分。高い火災保険に加入させられないためにも、火災保険は入居者側から指定しましょう。
保険スクエアbang!火災保険を見積もってみる
知っておくべき初期費用を下げる交渉術
続いて入居時に払う費用のうち交渉できる項目を解説していきます。
1家賃・共益費
交渉の余地がある項目1つめは「家賃・共益費」です。どちらも大家さんへの交渉となります。
ポイントは部屋を借りる前提で交渉すること。「家賃を下げてくれたら考えます」という交渉は「家賃を下げても入居するとは限らない」と思われ、大家さんも応じにくいです。
一方、「家賃を1ヶ月サービスか、もしくは賃料を3,000円下げてくれたらここに決めます」という借りる前提の交渉は、比較的応じてもらいやすいでしょう。
なお、不動産会社に相談した際、大家さんに掛け合うこともなく「無理です」と断られた場合、担当者を変えてもらうか別の不動産会社へ向かいましょう。交渉はあくまで大家さんと行うものであり、不動産屋の担当者が判断する項目ではありません。
2敷金・礼金
2つめは、「敷金・礼金」です。家賃・共益費同様に、大家さんへの交渉項目です。
ただし、仲介業者が礼金を上乗せした金額で提示してくる場合があります。先述した通り、相見積もりをとって確認しましょう。
3ハウスクリーニング代
3つめは、「ハウスクリーニング代」です。入居時にハウスクリーング代をとられる場合、部屋が綺麗であれば迷わず断っても問題ありません。
中には、入居時と退去時で2回ハウスクリーニング代を請求してくる会社があります。もし2回請求された場合は国民生活センターに相談しましょう。
問い合わせ先国民生活センター
4鍵交換代
4つめは、「鍵交換代」です。2~3万円の相場となっていますが国土交通省が定めた「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」には鍵の取替えは「入居者の入れ替わりによる物件管理上の問題であり、賃貸人の負担とすることが妥当と考えられる。」と記載されています。
国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」P.21
ただしあくまでガイドラインなので強制力はありません。最終的には双方で話し合って決める形にはなりますが1度ガイドラインの話を交え交渉してみる価値はあります。
もし借りる側が負担することになった場合も、自分で鍵屋を呼んだ方が安く済む場合がほとんど。悪質な不動産会社の場合、費用だけとり鍵を交換しない場合もありますので注意が必要です。
5保証会社加入料
5つめは、「保証会社加入料」です。一般的には家賃の50%~80%と言われていますが、中には上乗せした金額を提示する不動産会社も存在します。
対処法としては、家賃保証会社の負担が書かれたパンフレットを見積もりと一緒に受け取っておくこと。パンフレットを見て、原価のままの金額であるかを確認しましょう。
初期費用を抑えて部屋を借りる方法まとめ
賃貸物件をお得に借りる方法と交渉術はいかがでしたか。
不動産屋はこちらが知らないことをいいことに、さまざまな手法で必要以上に入居者からお金を搾り取ろうとしてきます。損をしないためにも、まずは賃貸物件を借りる際の仕組みをしっかりと理解しておきましょう。次に、相見積もりやサイトを利用して各会社を比較し、信頼できる不動産会社を見つけるのがコツです。
上記で解説した交渉術を知っていれば、不要な出費は抑えられるのでお部屋探しをするときの参考にしてみてください。